
理不尽な一撃
あれは、草木も眠る午前様まであと一歩に迫った夜11時のこと。静寂に包まれた我が家を、突如として「ゴトンッ!」という鈍い衝撃音が揺るがした。震源地は寝室。おそらく、我が家の小さな怪獣たちの誰かが、夢の中で大暴れしたのだろう。
「フッ…来るな…喉の渇きという名の夜襲が…。」
私は来るべき戦いに備え、小さなコップに氷という名の弾丸を込め、聖水(ただの水)を注ぎ、静かに寝室へと向かった。そこには怪獣たちが三者三様の寝相で深い眠りについていた。
私が眠りの世界へ旅立ってから幾ばくかの時間が流れた頃。案の定、隣で何やら地殻変動のような不穏な動きを感知し、私は覚醒した。薄目を開けると、そこにいたのは寝ぼけ眼の小さな怪獣、スー坊その人であった。彼は、まるで三日三晩砂漠をさまよった旅人のような顔で、こう呟いた。
「…みじゅ…のみたい…」
待ってましたとばかりに、用意していた聖水グラスを差し出すと、スー坊はそれを一瞬で吸引。最後の一滴を飲み干すまで、その勢いは衰えなかった。満足した彼はコテンと横になり、私は「任務完了」とばかりに彼の背中を優しく2回ほどタップし、再び眠りの世界への扉を開けようとした。
しかし、ここからが本当の地獄の始まりだった。
満足して眠りに落ちたはずのスー坊が、布団の上を縦横無尽に転がり始めたのだ。右へ、左へ、時にスピンを加え、本当に寝ているのか不思議に思うほど。しかし、これもいつものこと。放っておけばそのうちバッテリーも切れるだろう。私は彼のパフォーマンスをしっかりと目に焼きあ付けた後に瞼を閉じ、静かに眠りが訪れるのを待っていた。
そのときだった。
ゴツンッ!!!
何の前触れもなく、私の額のど真ん中に、岩石のような硬い物体がクリーンヒットした。あまりの衝撃に、一瞬、流れ星が見えた気がした。犯人は言わずもがなスー坊だ。スー坊の必殺技「無意識スリーピング・ヘッドバット」が炸裂したのである。
いっっっっってぇぇぇぇぇぇぇ!!!
声にならない悲鳴が、かろうじて私の口から漏れた。見れば、必殺技を放った張本人は、何事もなかったかのように、すぅすぅと天使(いや、悪魔?)のような寝息を立てている。
この理不尽な一撃に、私の心の導火線は一瞬で燃え尽きた。怒りの鉄槌を下す代わりに、私はそっと、しかし、「これ以上こっちに来るな」という断固たる意志を込めて、この小さな破壊神を安全な距離まで押しやった。
本当にびっくりした。いや、びっくりしたというか、痛すぎた。 夜中の寝室は、何が起こるかわからないサバイバル空間だということを、私はこの日、額の痛みと共に、改めて心に刻み込んだのである。
ここまで読んでくださりありがとうございました!では!
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