いつもと変わらぬ朝とマダム
朝起きて伸びをして軽くストレッチをする。縮こまった体を伸ばすと気持ちいい。
そのあと、寝ぐせ直しのシャワーを浴びて歯を磨き、出社する準備をしていく。
「まだ水曜日か…」
週末までの日を数える。今日を入れて3日働けば、休日がやってくる。
そんなことを考えつつ、準備を終えて最寄り駅に向かう。家を出たときは少し肌寒かったが、歩いているうちに体が温まってきた。
今日も暖かくなりそうだ。
「ダウンジャケットはいらなかったかな?」
駅についたときには、軽く汗をかいていた。ダウンジャケットを畳んで、通勤用のリュックの中に入れる。こういう時、リュックは便利だなと思う。
1回目の乗り継ぎを行う。多くの人が階段を上がっていく。今日も定刻通りに電車は運航している。
ホームについてしばらくすると電車が到着した。降りる人を待ってから、電車に乗り込む。前方を見ると椅子が1つ空いていた。
「お、ラッキー」
その空いている椅子に向かっているときだった。後ろからずかずかと走ってきたマダム。椅子に一直線。私にタックルを繰り出し、弾き飛ばしたところで、その空いていた椅子に堂々と座る。
マダムは椅子に着くなり何もなかったかのようにスマホを取り出し、何かをし始めた。映画でも見ているのだろうか。
マダムは椅子に座りたいという気持ちを前面に出していた。
障害となるもの(ここでいうと私)をはじき飛ばす。
ものすごい執念である。
色々なところでこういうことをやっているのだろうと思うと、ものすごく醜悪だなと思ってしまった。
このような大人にはなりたくないものだ。
そういえば謝罪もなかった。
人間としても糞であるなと思った朝だった。