4/15、土曜日の朝。この日は空が薄暗く、朝からしとしと雨が降っていた。
6時ごろに起きて準備を済ませて、以前住んでいたアパートに奥様と向かった。時間は7時を回っていた。この日はアパートに置かれたままの不用品を処分するために、業者さんが来てくれる予定になっているのだ。
「雨、よく降るなぁ」
と思いつつ、外をぼんやり眺めていると
「この辺はいっぱい鳥がいるんだよ。」
と奥様が教えてくれた。私はぼんやりと外を眺めていたくせに、鳥の存在に気づいていなかった。私は何を見ていたのだろう。この後も奥様が鳥を見つけてはいろいろと教えてくれた。
もしかしたら、これは奥様からのメッセージなのかもしれない
「ぼんやりしていないで、目の前で起こっていることをしっかり認識しなさい。」
ごくりと唾を飲み込む。
アパートに着くと、掃除機掛け、荷物の移動などをしはじめた。少しでも早く終わるように…。
何気にきつかったのが、フロアマットを剥がすこと。荷物をどかして剥がすという単純作業が運動不足の体には堪えた。
しばらくすると、奥様から
「なんかとかげみたいなのがあったよ。」
と言われたので、何かと思って見に行くと、確かにそこにはとかげのようなものがあった。よく見ると、ヤモリが干からびて落ちていた。私には心当たりがあった。
とある夏の日の夜。ジョギングから帰ってくると、壁にヤモリが張り付いていた。驚かさないようにドアを開けて入るつもりだったのだが、ドアを開けた瞬間ヤモリが家の中に入ってしまったのだ。
慌てて部屋に入って探したものの、警戒心が高いといわれるだけあって彼は姿を見せてくれなかった。そのうち出ていくだろうと思っていたが、どうやら彼はそのまま干からびてしまったらしい。かわいそうなことをした。
そうこうしていると、スマホに着信が入った。出てみると業者さんからで、到着時間と本日はよろしくお願いしますという電話だった。
業者さんが来ると、回収するものの確認を簡単にして、作業に取り掛かった。
業者さんは二人。リーダーと部下といった感じだろうか。部下は強面だったので、あまり顔を見れなかったのだが、奥様はしっかりとみていたらしい。
「あの人眉毛なかった」
「…そうか。」
部下の方はちゃらついた匂いが漂っていたが、仕事自体はきちんとしてくれていた。
40分くらいで部屋はきれいになった。回収後、汚れていた場所も綺麗に拭いてくれたのはうれしかった。
不用品が無事回収できたので、おみやげようにサツマイモを購入して、二人でランチに。
ひさしぶりにステーキを食した。
この日も奥様にはなにからなにまでしてもらったので、少しでも喜んでもらえたらうれしい。